コロナ禍後の地域公共交通に向けた具体策と制度の提案・全国路面電車ネットワーク
JR西日本は今期収益予想を3050億円の赤字と予測(連結決算)しており、これは約2年分の経常利益を失うことになります。しかも収益の根幹となる新幹線の落ち込みは激しく、近年拡大してきたインバウンドも数年間は回復が見込めません。また働き方改革やネット社会の進行により2割程度の減収はコロナ収束後も覚悟する必要がありそうです。しかもグローバル化の中で外国人株主は3割ほどあり、また金融機関の株所有も大きく、当面JRとしてはコストカットや安全対策の先送りを余儀なくされており、そのしわ寄せとしての減便を打ち出したといえます。
こうした減便は岡山都市圏、広島都市圏全体に及ぶものですが、自治体は今までJRの便数維持にはほとんど関心が無く、地域の交通関係協議会でもバス路線維持やデマンド交通導入が中心になっており、「JRは儲かっているから大丈夫」という思い込みが蔓延していました。
さて今回の請願書の出た瀬戸内市を走る赤穂線は、昭和37年に開業し、当初は一日の便数が普通列車13往復程度でしたが、JR分割民営化前後から大増便され、岡山-長船は一日36便と都市圏輸送の最小限を確保していました。そのため邑久駅・長船駅の合併前の中心地域では過去10年でも大幅な人口増加を果たしており、近年では西大寺の次の大富駅でも住宅開発が進んでおり、瀬戸内市はコミバスをつい最近6路線に増やし、この3駅を中心とした運用にしただけでなく、邑久駅の駅前広場改修に6億円をつぎ込んでいる矢先でした。長船駅は岡山駅が16.6km30分の位置にあり、今回同様の減便となる山陽本線和気駅とともに、移住定住政策でも人気のスポットとなっていました。
しかし、わかりやすい30分ヘッドのダイヤが崩れることは、都市政策として計り知れない影響がでそうです。
コロナ禍での全国の地域公共交通崩壊が現実のものになる中、我々全国路面電車ネットワークでは4月以来Zoom会議を35回開催し、学識者・市民・交通実務担当者から国会議員まで46人が自由に議論して、具体策と制度の提案を検討しました。今後提言を実装化するべく、国会・国土交通省、コロナ支援を行った多くの自治体への働きかけを開始します。11/16
2020-1115コロナ禍後の地域公共交通の方向性ver22・確定pff 10/6起草終了
同・用語解説pdf 賛同団体・協力団体名簿10/27pdf 全国NWパワポ資料11/16pdf
岡山記者発表資料pdf 11/20発表
「地域公共交通支援求め提言書、市にRACDA」 新着 11/21 山陽新聞社提供
「路線バス網維持へ早期の公費負担を 岡山のNPO提案」 11/21記事 日本経済新聞
「地域公共交通支援求め提言書、市にRACDA」
全国路面電車ネットワーク
コロナ禍の影響で、かねてから危惧されていた地域公共交通の存続の危機が鮮明になった今日、大都市への極度な集中を是正し、地方分散の推進、出生率の増加、地域強靭化のためには、地域における良好な公共交通サービスを基礎とした安心して暮らせるライフスタイルの提供が必要。 |
- 公共交通の運賃収入は、大幅減収の見込み。高速バス・観光バスによる内部補填も、見込めず、各事業者はコストダウンから、減便・路線廃止を本格化。
- 公共交通は、医療、教育等とともに地域を支えるインフラ。通学生や免許返上した高齢者等の日常生活の足の「交通崩壊」は地域社会崩壊に。
- 観光の国内需要喚起にも地域公共交通は不可欠。
1.早期に実施すべき具体的方策
①小中高校生の通学時公共交通利用の公費負担による子育て支援(事業者の割引負担軽減)。
②バリアフリーに関する費用の全面的な公費負担化(医療・介護費の軽減)。
③公共交通のデジタル投資(オープンデータ、キャッシュレス化の運営コストを含む費用)の全面的な公費負担化(接触軽減と運転手の保護)
④公費助成による乗継(鉄道・バス・タクシー等)も含めた運賃軽減(需要喚起、MaaSの有効活用)
― 訪日外国人旅行者受入環境緊急対策予算等をグリーンリカバリー施策として活用
2.短期間で創設すべき制度の提案
①地域に必要であるが採算性が厳しい公共交通について、地方自治体が路線・運行計画を主体的に決定できる枠組とそのための人材育成の制度(国)
②上記を可能とする市町村の公共交通費用負担(予算規模はおおむね一般会計の1%程度)を想定した施策と、そのための財源措置(地方交付税等)。
③域内交通のサービス・運賃等の総合調整機能を有する組織の創設(交通連合等)
3.検討を開始し、5年以内に改正すべき制度
①地域公共交通の運営の領域分化と官民の責任分担の明確化
― 採算が確保できる商業サービスと、公共的に供給するサービスの切り分け。
― 公共サービスと見なす区域・路線については、公共サービス義務(PSO)と位置付け、自治体がサービスに責任を持ち、事業者がこれを受託等、契約で運行する形。
― 鉄道の上下分離は官民の機能分離とし、公共サービス義務(PSO)の下で積極活用。
②上記を実現する関連事業法の改正と充分な予算措置
― 交通政策基本法、地域公共交通活性化・再生法の趣旨を各事業法に反映。
以上
補足・提案の意図と背景
現況では、各交通事業者に対し、地方創生臨時交付金を活用した地方自治体による支援や、国主導のGOTOトラベルなどの支援策が実施されているものの、依然として支援を実施していない自治体もあり、利用者減の回復もなかなか進んでおらず、公共交通の危機は続いております。
そこで、「1.早期に実施すべき具体的方策」、「2.短期間で創設すべき制度の提案」、「3.検討を開始し、5年以内に改正すべき制度」の3つに分け、合計9項目を重点施策として提案することとしました。
この提案を新交通システム推進議員連盟および国土交通省をはじめとする各省庁、内閣、地方自治体や経済界などに働きかけていく予定です。まずはホームページで公開し、賛同団体を募る予定です。
全国路面電車ネットワーク運営委員長 NPO法人公共の交通ラクダ・岡山 会長 岡 將男
問い合せ先:okj165@poppy.ocn.ne.jp
■交通政策基本法改正と国土強靱化について、11/20衆議院国土交通委員会通過の資料 (11/23補足)
2020-1120交通政策及び国土強靭会に関する決議
2020-1120交通基本法等改正案概要
2020-1120交通政策基本法等改正案要綱と法案
2020-1120交通政策基本法等改正案新旧対照表
コロナにもめげず、延伸計画。
ひたちなか海浜鉄道延伸、国に事業許可申請 来年1月にも判断 新着 9/10 yahoo!
RACDAではコロナ禍で影響を受ける、JR西日本の中国地方の路線について、その存続の危機をどの程度か、公表資料により試算をしてみた。結果は衝撃的な地図が出てきた。数々の仮定に基づくとはいえ、多くの路線が存続の危機を迎える。影響が長引けば、必ず存続問題は起こると考え、それぞれの地域の関係者だけでなく、地域全ての人が考えるべきである。
またこの問題は鉄道だけでは無い。いま多くのバス会社も静かに、路線の減便・廃止・営業所の廃止を検討している。そろそろ様々な動きが水面下で起こっているはずだ、いまあるバス路線の半分は、来春には危機を迎えているはずだ。自治体の長、議員はまずこの事実に向き合い、市民に呼びかけ、国をも動かさなければならない。 RACDA 会長 岡將男
2020年8月現在のJR路線と20%旅客減少の場合の存続可能路線
岡山県では9月18日に下記、公共交通データ利活用セミナーを開催します。
「オープンデータ最先端都市岡山」と風聞にもありますが、宇野バスの高野さん、東大の伊藤さん、トラフィックブレインの諸星さんなどなど、強力布陣です。昨年のバスマップサミットでのデジタルバスマップ合宿の再現なるか。特に連動して懇親会はやりたくても、なかなか難しいけれど、再起動です。岡山県がチャレンジしてくれ、いま市町村にもこちらからも呼びかけます。Zoom参加もできますので、こういった時ですから、逆にパネラー達を質問攻めにして下さい。コロナ後の日本のオープンデータはどうするべきか!!!!
概要
1 開催日時 2020年9月18日(金)13:00〜16:00
2 参加方法 〜下記の(1)又は(2)をお選びいただけます!〜
(1) オンライン参加
参加者のオフィス等でweb会議サービス「Zoom」又は「Youtube」で視聴。
参加URLは申込後に事前に送付します。
(2) 会場参加
会場:岡山県生涯学習センター視聴覚室[岡山市北区伊島町3丁目1番1号]
定員:30名
参加者は会場に設置された大型スクリーンで視聴。
会場には、公共交通でお越しください。
3 参加申込方法 2020年9月14日(月)までに、
下記サイトの申込フォームよりお申し込みください。
https://forms.gle/qbbFZRfXmZ5rs8fM9
4 告知サイト https://www.pref.okayama.jp/page/676870.html
コロナ禍は私たちの生活、日頃の活動にも大きな影響を与えており、また今後の公共交通のあり方についてあらためて考える契機となっています。さて、標記検討会は一時中断しておりましたが、次の通りオンラインにて開催いたします。講師はウイーン工科大学の柴山先生にお願いしており、当日は現地から参加していただきます。
1.日時 2020年8月29日(土) 17時~19時
2.方法 ZOOMによるオンライン開催
3.講師 ウイーン工科大学交通研究所 研究員 柴山 多佳児 氏
4.題目 「コロナ対応を通して見る欧州の公共交通運営制度」
※参加費 : 無料
申込み : Eメールにて、お名前、ご所属、メールアドレスをお知らせ願います。
→ 小田部(コタベ)まで a.kotabe@k8.dion.ne.jp
お申込みされた方には、受付確認メールと後日(開催2日ほど前)、当日使用するURL、ID、パスワードをお伝えします。
※柴山先生は、日本経済新聞に「公共交通に戦略的投資を」と私見卓見(2020.8.3版)に寄稿
されています。 → https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62140300R30C20A7SHE000/
人と環境にやさしい交通をめざす協議会(交通まちづくりの広場)幹事 小田部明人
一方地方のバス会社では、収益源たる観光バス、高速バスは壊滅状態が続き、日常の生活交通のうち定期客は学校の再開や企業活動の再開で80%程度までは復活しているものの、都心に向けての現金客、買い物や通院、手軽な観光、県外からの観光が大きく減少していて、全体として60%程度までしか回復していないのではないか。航空や新幹線の落ち込みが大きな話題になるが、観光バスや高速バスの収益による内部補助で生活交通を支えていたので、打撃は大きい。

交通崩壊を防げ・経済支援
たとえば岡山県では総額1億4508万円、岡山市では4億2000万円、さらにようやく倉敷市では「コロナ禍の中、感染や利用減のリスクを抱えながら社会的使命を果たしてくれたことへの感謝の意味がある」として9700万円の支援が決定し、それなりのボリュームになった。しかし残念ながらこれらは出血をとりあえず包帯を巻いて止める程度の効果しか無く、縫合したりする、あるいは全身の状態管理するには至っていない。現状我々はまずこうした自治体支援の輪を広げる努力に集中しているが、これらの合計はすでに100億円程度は越えているだろう。
おそらく10月のダイヤ改正では、全国でかつてない大減便がおこる。既にこの秋の営業所単位の廃止などの動きが静かに進んでいるが、運輸局でさえその実態は把握できていない。通常ではない事態だから、地元協議なども十分には行われないだろう。自治体もそうした情報を察知できればいいが、実力次第ともいえよう。
4.自治体中心の公共交通計画、国レベルでの方向付けへ
ともかくほおっておくと、今後10年で起こると思われたバス路線廃止が、この1年でおこる。高校生の通学に困るなら高校のPTA は今から動かないと間に合わない。いま一生懸命受験勉強しても、来春はバス路線はなくなるかもしれない。それが分るのは3月の入学式直前だったりするのだ。さらにかつて井笠バスの突然の営業停止のような事態は今年は全国で起きるが、あの時たった10日で事業継続を受けた両備グループのようなナイトはもう出てこない。
こうした事態に対して、我々は国会の新交通システム推進議連と連携して、地方自治体が各地の交通事業者の支援をしやすくなるように、交通政策基本法の一部書き換え、さらに財政支援しやすくなるような交付金制度の創設、財務省への働きかけをやろうと思う。毎週の全国路面電車ネットワークZoom会議には議連会長の逢沢一郎氏も参加して議論した。各地の事業者や市民の声、自治体関係者のチャレンジが必要だ。
全国路面電車ネットワーク運営委員長 岡將男
コロナ禍が発生してから、アメリカでは早々に国レベルで、交通事業者に25ビリオンドル、2兆6000億円ほどの支援が3月に実行された。日本とは2けた違う対応だが、その背景には主要10事業者連名の書簡を上院・下院へ出していました。それが初回の支援につながったようです。
Atrlanta, GAのMARTAのブログ記事 pdf
さて7月14日には、今度はアメリカ国内の主要公共交通28者連盟での国会への支援要求書簡が出されています。
Seattle, WAのSound Transit(Seattle近郊のライトレールや通勤バスなどを運行する事業者)のブログ
掲載された書簡の説明で、Sound TransitのCEOが述べたことを中心に記載されて
この書簡によれば、必要な支援として、あらたに32-36ビリオン、3兆3600億円~3兆7800億円の支援が必要だと訴えています。その内容を見ると、自分たちは毎日、社会基盤維持に必要な多くの労働者を含めて2200万人を運び、数百万人の学生も運んでいると述べています。
日本でも自民党の議連に対して、民鉄協会やバス協会が陳情を行っていますが、市民に対する呼びかけというスタイルを取っているようにはありません。こういう点も支援体制の構築には支障となっています。
我々全国路面電車ネットワークでは、こうしたアメリカの事例もふまえ、国会への働きかけも強化していくと同時に、市民への呼びかけも繰り返していきます。
全国路面電車ネットワーク運営委員長 岡將男 (資料調査 佐野一昭)