2022年 12月

■2018年の路面電車サミット松山開催に向けて、全国路面電車ネットワークでは、全国の電停でのバリアフリー調査を行い集計した。

 

 

 

 

 

 

 

2018-0114全国電停調査集計表・完成
2018-0114電停・札幌市交通局
2018-0114電停・函館市交通局
2018-0114電停・都電荒川線
2018-0114電停・東急世田谷線
2018-0114電停・富山地方鉄道
2018-0114電停・富山ライトレール
2018-0114電停・高岡万葉線
2018-0114電停・福井鉄道
2018-0114電停・豊橋鉄道軌道線
2018-0114電停・京福電鉄嵐山線
2018-0114電停・阪堺電気軌道
2018-0114電停・岡山電気軌道
2018-0114電停・広島電鉄
2018-0114電停・伊予鉄軌道線
2018-0114電停・とさでん交通
2018-0114電停・長崎電気鉄道
2018-0114電停・熊本市交通局
2018-0114電停・鹿児島市交通局

■市民団体のある都市では、できる限り実地に調査していただき、RACDAで岡山、富山、松山については調査
その他の都市では、Googleマップの電停に貼り付けられた写真やGoogleのストリートビューも参考にした。
調査項目
MU=低床電車の床と同レベルまでマウンドアップされているか
Nog=ノーガード電停
斜路=電停へのアクセスのための斜路等は整備されているか
電停幅=電停概略有効幅(写真で点字ブロックの寸法を参考に割り出した推計を多く含む)
車いす=曲がりなりにも車いすが使えるか、マウンド・斜路・隙間幅
安全柵=電停に安全柵はあるか
屋根=電停に屋根はあるか
ベンチ=電停にベンチはあるか
別記では、バリアフリー団体の指摘で、各社ホームページの車椅子使用可能情報を調査して掲載
鹿児島市交通局のホームベージが最も利用者に分りやすいと分った。九州3社が頑張っていた

■2002年導入の岡山電気軌道MOMO導入時に、国交省道路局に働きかけて、車椅子電停改良に道路バリアフリー化の道路財源を活用できるよう、道路構造令の変更をしてもらって、これで全国の電停は改良できると考えていたが、甘かった。低床電車の導入は1997年から始まっていたが、20年で115輌/701輌中、高床式のバリアフリー対応(世田谷線など)含めて、電車側で車椅子が自力で利用できるのは23%(2022年末で宇都宮ライトレール導入車輌を含めて173輌/708輌)、一方電停側で介助を必要としつつもかろうじて車椅子が使えるのは67%となり、電車側×電停側=車椅子対応バリアフリー率は15.4%ということになる。100年たっても日本では車椅子はほとんど使えないという事実に愕然とした。
■この数字は、松山路面電車サミットにおいて2018年に発表したが、ここまでホームページなどに掲載してこなかったのは、事業者の努力だけでは不可能だと分っており、なおかつ国や自治体でも簡単にいかないことが分っていたからだ。電停の柵工事などの市業者負担はあるし、改正した道路構造令で新設車椅子電停には、車椅子がすれ違える150cm幅の基準があり、車線減少など道路空間の再配分が必要で、道路管理者や警察、地元の同意が不可欠であり、調整に大変な手間が掛かる。結果として各地で毎年1カ所でも改良できたらましなほうという事態になっている。この資料の公表によって、事態が変わることを望んでいる。
■一方、2022年8月の宇都宮ライトレール開業では、新設であるため、当然ながら電車側100%、電停側100%が実現する。実は富山ライトレールではある程度実現していたが、既存の富山地方鉄道乗入れでは、簡単にいかなかった。また伊予鉄や広電、福井鉄道等の事例から、それまで導入した各地の中古の車輌では、車輌幅などの規格が様々で、完全なバリアフリーは簡単では無いと分った。従って全面的に電停改良し、車輌も一度に全部入替えない限り、重量のある電動車椅子対応などは難しい。欧米では一挙に電停改良と新車50両導入などができる、すなわち100億円単位での投資が出来る制度があるが、日本ではなかなか実現しそうに無い。
■コロナ下で疲弊する地方の事業者で、電停改良に大きな投資は難しく、今後は車輌含めてバリアフリー投資は自治体の仕事とするべきだ。だが国交省では大都市圏の私鉄に対して、バリアフリー資金捻出のために運賃値上げすることを許可したが、地方都市ではそもそもそういうやり方では永遠に車椅子対応のバリアフリーなどは実現しないであろう。制度の不備としかいいようはない。駅のトイレ問題と同様に、公共交通機関のインフラの一部として、自治体が主体的に計画し整備していく強い制度財源が必要である。
最後にヴァンソン・藤井由実さんからいただいた、ストラスブールのライトレールの交差点の写真を見ていただきたい。クルマを排除した軌道はトランジットモールになっており、トラムと人、車椅子、ベビーカー、自転車、それにキャリーバックを杖代わりにしたお年寄りが共存している。

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昭和60年に国鉄のホバークラフト就航運動を契機に、岡山未来デザイン委員会を設立し、昭和62年「交通シンポジウム」を開催し、路面電車環状化や岡南飛行場存続、バス網充実を提案した。これが平成7年のRACDA設立に繋がるが、その頃、岡山市のある幹部が、「岡山のバスに触ると大怪我するよ」と忠告してきた。路面電車の駅前乗入れさえ、平成9年以来26年もかかったのは、この業界事情が背景にあるだろう。
だが、全ての事情を分った上で、「本来公共交通が公的に保障されるべき所を、たまたま国土が細長いために、公共交通が民間で成り立ってしまった日本のガラパゴス」という
日本全国の縮図というべき岡山で、LRTというビッグに仕掛けをやることに意義を感じてやってきた。
日本の交通事業者は、その地域の有力企業で、しかも交通を制する事は、地域の商売を牛耳ることでもあるから、いわば交通事業者は「土豪」なのである。太田恒平氏が奇しくも、岡山のバス業界を戦国時代になぞらえるのは、まさに大当たり。
しかし考えようによっては、それだけ沢山の事業者が生き残っているのは、地域の経済力や文化力を背景にしている現状でもある。地域の底力とも言える。あとはどう政治がこれをコントロールしていくかであって、RACDAのような市民団体は、そのガードレールやガイドラインくらいは示せるということだ。
今回の市議会に合わせて、クリーンモバイル岡山倉敷連星都市圏3を発行したのも、こうした岡山での縮図だけでなく、全国に通じるガイドラインを提示し、日本の公共交通だけでなく、まちづくり、地域課題、そして関連の様々な課題を解決する糸口を示そうとしたものである。
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 2022-1129山陽新聞
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すったもんだの路面電車岡山駅乗入れ、2回の市長選での争点になりながら、ようやく1/10に着工との市長記者会見があった。1997年5月第3回岡山路面電車サミットの会場で、当時の岡電の岡田常務が「岡山駅前広場に乗入れたい」と表明したのが始まり。サミット主催者であるRACDAも会議直前に知らされた。その頃RACDAは建設省・運輸省(国交省登場以前)にロビー活動を行い、市民団体主催の会議に、前例の無い本省後援をしていただいた。その年「路面電車走行空間改築事業」が創設される。電停改良や交通結節点改良に道路財源が使えるよう、議論が始まり、富山ライトレールや宇都宮ライトレールに繋がる諸制度整備のきっかけになった。
当時、路面電車事業者側(全国路面軌道連絡協議会・事務局広島電鉄)の窓口になっていたのが、現在の宇都宮ライトレール常務の中尾さんで、この頃から二人三脚であちこち駆け巡ることになる。
さてその後、路面電車の駅前乗入れは、豊橋、広島横川、高知(瓦版19号)で実現し、九州新幹線開通では鹿児島、熊本が乗入れた。県外から来た人々にとって、路面電車が駅前に見えれば、まずは一番賑やかな所に確実に連れて入ってくれる。新幹線開業で県外からの観光客を見込めるので、高岡・富山のように駅舎の中まで乗入れている。その後新幹線開業に向けて、福井でも乗入れが実現し、さらに広島で駅舎への乗入れ工事が始まった。
こうした中で、岡山は一人取り残された感はある。(瓦版22号)当時、市議会で「余所がやってうまくいったら、やれば良いが、先にやることはない」と質問した議員がいたのを思い出す。RACDAは路面電車環状化を目指すために設立されたが、たった100mほどの延長の駅前乗入れに、こんなに時間がかかるとは、さすがに予測はできなかった。吉備線のLRT化も2006年の富山ライトレールと同時にスタートしたのだが、とうとう2023年の宇都宮ライトレール開業をネタにして、活動再開するしかない。
2006年RACDAは吉備線沿線地元町内会に呼びかけて、22000余の署名を集めてもらった。そのお陰で岡山市が本格的に吉備線LRT化を
検討開始。その後まずは路面電車駅前乗入れだけでも早く実現したいと、2012年に署名を開始し(瓦版97号)、2013年1月岡山市に13046筆を提出(瓦版122号)。そこから具体的にスタート。だが途中で、「路面電車駅前乗入れよりデッキ」という予期せぬ議論が起こり(瓦版137号、138号)RACDA意見書を提出(瓦版142号)、145号では岡山市が平面乗入れ安を採用と書いてある。146号、148号とデッキ案とのせめぎあいは続き、昨年の市長選に至るまで様々な事が起こった。163号では乗継ぎ拠点整備を訴え、毎年のように駅前広場で路面電車まつりを開催してきた。詳しい推移については、トップページのRACDA瓦版をじっくりお読みいただきたい。
当初も駅前乗入れの直接経費は3億円(単にレールを引くだけ)だったが、岡山市ではタクシー乗り場と送迎乗り場を入れ替え、駅前広場全体をリニュアルする大規模な計画に変更。この時点で路面電車乗入れ部分は10億円ほどだった。具体化すれば、様々な理由で費用が膨らむのは、道路事業すべてであるのは分っていたが、広場全体のリニュアルは欲張りすぎたのかもしれない。避難経路の確保の法解釈の間違いから、工期と費用が大幅に増大するという、晴天の霹靂のような事態に翻弄される。推進した市民団体としても、戸惑いを感じざるをえなかった。結局岡山市は駅前整備費用を圧縮して、今回の着工になった。駅前広場地下には、地方都市としては大きな地下街があるので、乗入れ位置は最小限に済むような位置に考えてあった。(RACDA瓦版3号2004年)
しかしともかく、路面電車駅前乗入れをきっかけに始まった中心市街地活性化の一連の取組みは、岡山都心のイオン立地に繋がり、都心の地価は上昇し、都心の人口はV字回復。(瓦版216号)岡山市全体の固定資産税が40億円程度増収した(550億円ほどの規模)のも、取組みの成果である。全国各地の駅前商店街の衰退に比べて、岡山は健闘しているのではないか。
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【解説】岡山市の新市民会館「ハレノワ」完成間近も 周辺整備に遅れ…課題は? 2022-1208KSB
 路面電車環状化についても語られているが、道路用地は既に確保されていて、土地の買収は必要ないことを申し添えておく。


岡山駅バス時刻表