全国の電車バス路線、半減の危機


コロナ禍は巨大な災害である!
「ため息…通学費用が5倍!肥薩線被災し、高速バスに」との記事が出て、鉄道の大規模な被災が、たちまち高校生の足を奪う実態が浮き彫り。だがもはや災害が連発する中で全ての被災鉄道路線の復旧は不可能になりつつある。
再度書く、コロナ禍は巨大な災害である!
1.大幅な落ち込みで経営危機
コロナ禍により、JCOMMのアンケートによれば、全国の公共交通事業者の半分は8月末には事業継続困難になると答えているが、このままだと、今月末には多くの地方の電車バス会社などの経営は困難になるのは間違いない。落ち込みピークの5月の札幌では都心だけの路面電車は昨年1億1406万円が5470万円と前年対比48%、地下鉄は全線35億6861万円が17億0721万円と前年対比などの落ち込みは激しかった。
全国的緊急事態宣言が解除されて、5月の半減以下という事態から一旦は回復の兆しも出たが、第二波の各地拡散の中でGoToキャンペーンのてこ入れもほぼ無意味、むしろ混乱を助長しており、JR新幹線などでも再び利用客の減少が始まっている。たとえばJR 四国の速報では、4月前年対比22%5月24%が6月48%と回復したものの、7月上旬42%中旬40%と再度落ち込んでおり、4月~7月中旬の合計では定期76%現金等26%となる。
一方地方のバス会社では、収益源たる観光バス、高速バスは壊滅状態が続き、日常の生活交通のうち定期客は学校の再開や企業活動の再開で80%程度までは復活しているものの、都心に向けての現金客、買い物や通院、手軽な観光、県外からの観光が大きく減少していて、全体として60%程度までしか回復していないのではないか。航空や新幹線の落ち込みが大きな話題になるが、観光バスや高速バスの収益による内部補助で生活交通を支えていたので、打撃は大きい。
2.自治体の支援メニュー
こういう事態に対して、国交省では感染対策として全国で140億円ほどの予算を組んだが、赤字補填できるものでは無く、対応は各地の自治体に丸投げされており、臨時交付金を柔軟に使うという方向だけが示された。そこで各地の自治体には、電車バス会社の悲鳴が大きく上がったところから様々な支援が出ており(松本市・茨城県)、県レベルではようやく千葉・神奈川・石川・奈良・大分・鹿児島以外の県で支援が出そろってきた。
また市町村単位でも急ピッチに支援メニューが出ているが、把握は容易ではない。
交通崩壊を防げ・経済支援
たとえば岡山県では総額1億4508万円、岡山市では4億2000万円、さらにようやく倉敷市では「コロナ禍の中、感染や利用減のリスクを抱えながら社会的使命を果たしてくれたことへの感謝の意味がある」として9700万円の支援が決定し、それなりのボリュームになった。しかし残念ながらこれらは出血をとりあえず包帯を巻いて止める程度の効果しか無く、縫合したりする、あるいは全身の状態管理するには至っていない。現状我々はまずこうした自治体支援の輪を広げる努力に集中しているが、これらの合計はすでに100億円程度は越えているだろう。
3.各社の減便、路線廃止の方向 
一方、民間会社として存続するためには、管理部門の一時帰休により雇用調整補助金をもらったりしているものの、当初は運行便数を維持したために、収入減少はその金額だけが赤字として積み上がって、将来取り戻すチャンスはもうない。鉄道事業では固定費が大きく、もっと大変なはず。とりあえず各社は資金繰りに走り(富山地方鉄道宮崎交通)、一定成功はしているから大きな倒産は出ていないが、そろそろ限界のはず。1-2年の中期的見通しで各社は30%以上の乗客数減少を見こんで、そろそろバスでは大幅減便(仙台市交通局)と路線廃止を検討している。岡山でも両備バスは8/1から主力の西大寺線でも減便実施、下電バスは瀬戸大橋線などの廃止を決定。一昨年話題となった岡山バス大戦争のきっかけとなっためぐりん西大寺線はいち早く大減便を行っている。
おそらく10月のダイヤ改正では、全国でかつてない大減便がおこる。既にこの秋の営業所単位の廃止などの動きが静かに進んでいるが、運輸局でさえその実態は把握できていない。通常ではない事態だから、地元協議なども十分には行われないだろう。自治体もそうした情報を察知できればいいが、実力次第ともいえよう。
来春の新学期には、当てにしたバスが無くなってるてのは、全国で起こりうる。肥薩線だけじゃない。
岡山で2年前に起きた、めぐりん参入に対する両備岡電の赤字路線のバス大廃止表明のような事態は、このコロナ禍の状況下では全国で起こるはず!このとき分析したトラフィックブレインの太田恒平さんによれば、「一日30便以下の路線は赤字、廃止の可能性がある」としており、岡山では現状と赤字廃止後の二枚の地図がしめされて、我々は衝撃を受けた。
この廃止表明を契機に、岡山市でははじめて公共交通網形成協議会が開かれ、国もこれに反応して、この春には地域公共交通活性化再生法が改正され、バス部門の独禁法運用が変わり、熊本・広島ではパス会社の共同経営がなされようとしている。

4.自治体中心の公共交通計画、国レベルでの方向付けへ

ともかくほおっておくと、今後10年で起こると思われたバス路線廃止が、この1年でおこる。高校生の通学に困るなら高校のPTA は今から動かないと間に合わない。いま一生懸命受験勉強しても、来春はバス路線はなくなるかもしれない。それが分るのは3月の入学式直前だったりするのだ。さらにかつて井笠バスの突然の営業停止のような事態は今年は全国で起きるが、あの時たった10日で事業継続を受けた両備グループのようなナイトはもう出てこない。

こうした事態に対して、我々は国会の新交通システム推進議連と連携して、地方自治体が各地の交通事業者の支援をしやすくなるように、交通政策基本法の一部書き換え、さらに財政支援しやすくなるような交付金制度の創設、財務省への働きかけをやろうと思う。毎週の全国路面電車ネットワークZoom会議には議連会長の逢沢一郎氏も参加して議論した。各地の事業者や市民の声、自治体関係者のチャレンジが必要だ。

全国路面電車ネットワーク運営委員長 岡將男

 


岡山駅バス時刻表